4.建設協力金方式
建設協力金方式は、土地所有者と事業会社との土地活用共同システムです。最近、幹線道路沿いに、レストラン、紳士服店、スポーツ用品店、本屋、ディスカウントショップなどの事業会社が、盛んに出店を行っています。
これらの事業会社が出店の際によく利用するのが、建設協力金方式です。
この方式は、土地所有者が事業会社から建物を建てるための資金を建設協力金として預かり、その資金で建てた建物を事業会社に賃貸するものです。
(1) 建設協力金方式のしくみ
建設協力金方式は、次の手順で行われます。
@事業会社が出店のための土地を探し、土地所有者に建設協力金を支払い、建物を借り受ける旨の申込みをします。
A土地所有者と事業会社は、建物の内容、賃貸料、賃貸期間、建設協力金の額などの諸条件を話合いの上決定し、契約を締結します。
B事業会社は、建設代金の全部又は一部を建設協力金として支払います。建設協力金は無利息か、利息がついてもきわめて低利になるのが普通です。
C土地所有者は、契約に従って事業会社が指定した建物を建設会社に発注します。そして建設協力金を代金の支払いに充てます。
D建設会社は建物を引き渡します。
E土地所有者は建物を事業会社に貸し付けます。
F事業会社は賃料を支払います。
G土地所有者は建設協力金を返済します。この返済にあたっては、賃料と相殺することにより分割返済することが多いようです。
(2) 建設協力金方式のメリットとデメリット
建設協力金方式には次のような<メリット>があります。
■資金は建設協力金によりまかなわれるため、銀行借入等の資金調達の必要がありません。
そのため事業リスクも少なくなります。
■金利を支払う必要がないため、事業収支も楽になります。
■建物は事業会社が長時間借り受けるため、収益が保証されます。
一方建設協力金方式は、次のような<デメリット>
があることに注意してください。
■建物の設計・建設は、事業会社の指定によって行われるため、契約が更新されない場合や会社の倒産等によって契約の継続ができなくなった場合に、次のテナントを探すのはかなり難しくなります。
したがって、相手の事業会社の選定がきわめて重要になってきます。
■契約が中途で解約された場合、土地所有者に負担がかかることがあります。したがって、解約金の支払い、建物の撤去などについても契約書に定めておくべきです。契約にあたっては専門家に相談する必要があります。
(3) 相続対策としての効果
建設協力金方式では、土地信託方式や事業受託方式と同様に、次のような評価額の引下げの果があります。
●建物は貸家として借家権の価額30%を差し引くことができます。
●土地は貸家建付地として評価減することができます。
●さらに、小規模宅地の評価減として、200平方メートルまでについては50%減額できます。
●建設協力金として預かっている金額は、相続税の課税価格の計算上、債務控除として相続財産から差し引くことができます。
また、相続開始前3年以内に取得した土地建物が取得価額で評価されるのは、建設協力金方式の場合も同様です。
5.新借地方式
新借地方式は、土地所有者と、主に生命保険会社などとの
土地活用共同事業システムです。
生命保険会社などが土地所有者から土地を一括して借り受けて、そこに建物を建設して運用し、地代を支払います。
この方式は(イ)権利金の授受を行わず、高額の地代が支払われること、(ロ)借地契約期間終了後に土地が無償で返還されることに特徴があります。
(1) 新借地方式のしくみ
新借地方式は、次のような手順で行われます。
@土地所有者と生命保険会社は、土地賃貸借契約を締結します。契約にあたっては、「相当の地代」を支払うことと、土地は無償返還することとします。
A生命保険会社は相当の地代を支払います。相当の地代とは、土地の相続税評価額の過去3年間の平均価額に対する6%相当額をいいます。相当の地代は、一般の地代よりも高額になるのが普通です。また、地価の上昇に応じて地代を値上げし、借地権が移転しないようにします。
B生命保険会社は事業計画に従って、建設会社に建物を発注し、代金を支払います。そして建物の引渡しを受けます。
C生命保険会社はテナントを募集し、建物の賃貸をします。テナントから受け取った家賃は相当の地代の支払いに充てられます。
D借地契約期間終了後に、土地は無償で返還され、建物は土地所有者に買い取ってもらいます。
(2) 新借地方式のメリットとデメリット
新借地方式には次のような<メリット>があります。
■建物の建設を目的として土地を賃貸した場合には、借地権が発生して、土地がなかなか返ってこないのが普通です。新借地方式では、借地権が発生しませんし、契約期間終了時には土地が無償で返還されます。
■一般の地代よりも高額な相当の地代を受け取ることができます。
■資金調達や経営のノウハウを必要としませんし、ほとんど手間もかかりません。そして経営ノウハウを吸収することもできます。
一方、次のような<デメリット>もあります。
■土地を単に賃貸しているだけであり、事業利益を受けることができません。
■契約期間終了後に建物を時価で買い取らなければなりません。その後は自分で事業を経営しなければならず、特にこれまでの賃貸事業がうまくいっていなかった場合などには負担が大きくなります。
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