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給与計算の概要 |
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【 目次 】 |
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1.給与計算の範囲
2.給与規定等の確認
3.給与明細等の用意
4.タイムカード等の用意
5.社会保険について
6.扶養控除等申告書の提出
7.源泉徴収票の用意
8.住民税について
9.給与計算は法律に基づいて
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1.給与計算の範囲
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給与計算というと、狭い意味では、各社員の給与の総支給額を計算し、そこから社会保険料や所得税・住民税などの控除額を差し引いて、毎月の給与や賞与の支給額を計算することをいいます。
この給与計算を行うためには、事前に就業規則の作成や人事情報の収集、社会保険の手続きなどが必要になります。
支給額を計算した後にはその支払い、社会保険料の納付、所得税 ・住民税の納付をしなければなりません。さらに給与には退職金も含まれます。
また、各社員への給与の最終的な支給額は年末調整によって確定します。
したがって、広い意味での給与計算事務は、給与計算のための準備手続き、毎月の給与支給額の計算、賞与支給額の計算、退職金支給額の計算、それら支給額の支払い、社会保険料や所得税等の納付、年末調整をも含んだものとなります。
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2.給与規定等の確認
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給与の決定・計算のしかた、支払方法、締日・支払日などの給与の支給に関するルールは就業規則に定められることになっています。
したがって、給与計算をするためには、就業規則の中身を確認しておく必要があります。
就業規則には給与に関する事項のほか、従業員が会社で働く上での労働条件や従業員が守るべき事項などが定められています。
就業規則の作成が義務付けられているのは、常時10人以上の従業員を使用している事業所です。
就業規則を作成したら、従業員代表の意見を聴き、その意見書を添付して労働基準監督署に届け出ることになっています。
就業規則に記載する事項は、図表のように絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項、任意的記載事項の三つに分けられます。
会社によっては、就業規則のほかに、給与規定を別に定め、給与に関する手続や基準をさらに細く規定していることもあります。
なお、従業員が10人未満の事業場では、就業規則の作成や提出が義務付けられていません。
しかし、就業規則は給与の支給に関するルールというだけでなく、労働条件や職場の規律を定めたものなので、作成して従業員がいつでも内容を確認できるようにしておくべきでしょう。
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3.給与明細等の用意
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給与計算を行なうため、またその結果を給与を受け取る従業員に知らせるために必要となるのが給与明細です。会社によっては、給与明細書とか給料支払明細書などといろいろな名称を使うことがありますが、本書では給与明細書で統一します。
給与計算の多くの作業は、この給与明細書に必要な事項を記入することによって行なわれます。給与明細書の用紙は市販されていますので、これを購入して使用することができます。
給与明細書に記載される項目を大別すると、
@労働日数、労働時間、残業時間など、
A基本給や各種手当などの給与の支給総額、
B社会保険、所得税、住民税などの給与から控除する項目、
C給与の差引支給額
の4つです。
各種手当などは自社で記入できるようになっています。
給与明細書と給与台帳を別々に作成するのは手間がかかるため、複写式の給与明細書を使って、その内に一枚を従業員に渡し、残りを会社保存用の給与台帳としているのが一般的です。
会社によっては、自社にあった給与明細書を独自に作成して、使っているところもあります
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4.タイムカード等の用意
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給与総額の中には、基本給や家族手当などの固定的な給与だけでなく、残業手当、深夜労働手当、休日労働手当などの変動的な給与があり、これらは労働時間数によってその金額が決まります。
また、欠勤や遅刻・早退があったときには、給与カットが行なわれることもあり、そのためには出勤・欠勤日数、労働時間数などのデータが必要になります。
出勤・欠勤の状況、労働日数、労働時間数など給与計算を行なうために必要となる基礎データを把握するために必要となるのがタイムカードや出勤簿です。
出勤簿では、手作業で出社時刻や退社時刻が記入されることになります。その記録にもとづいて出勤・欠勤日数、残業時間などを集計します。
従業員数が多いため、手作業で煩わしいという会社ではタイムレコーダを使用すると便利です。
これを使えば、出社時刻と退社時刻は簡単にタイムカードに記録されます。これにもとづいて出勤簿と同じように、手作業で出勤・欠勤日数、残業時間数などを集計することになります。最近では、労働時間数などの集計もできる電子タイムレコーダも普及しています。
いずれにしても給与の締切日の翌日には、出勤簿により、あるいはタイムカードを回収することにより、労働日数や労働時間数を集計しておく必要があります。
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5.社会保険について
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五種類の社会保険の概要を知っておく必要があります。
(1)健康保険
健康保険は、病気やケガをしたときの医療費等の保険給付を目的とするもので、常時1人以上の従業員を使用する会社と、常時5人以上の従業員を使用する個人経営の事業所に適用されます。
保険料は、原則として会社と従業員が折半して負担します。従業員の負担する分は給与から天引きして、会社負担分と合わせて毎月納付します。
(2)介護保険
平成12年4月から始まった介護保険制度による介護保険の保険料は、40歳以上の人につき、健康保険料と一緒に天引きされ、納付されることになります。
(3)厚生年金保険
厚生年金は、老齢になったときの年金給付や障害・死亡時の年金や一時金の給付を目的とするもので、健康保険の適用事業所が、そのまま厚生年金保険の適用事業所となります。
厚生年金保険料も、原則として会社と従業員が折半して負担し、従業員の負担分は天引きします。
保険料は会社で一括して、健康保険料とともに毎月納入します。
(4)雇用保険
主に失業したときの保険給付などを目的とするものです。従業員を1人でも雇用していれば、雇用保険に加入することになっています。
保険料は会社と従業員が一定割合で負担します。雇用保険料は原則毎年1回、5月に納入します。
(5)労災保険
業務上または通勤途上で従業員がケガをしたり病気になったときに、保険給付を行なうことを目的としたものです。従業員を一人でも雇っていればこれに加入します。保険料はその全額を会社が負担し、雇用保険と一緒に毎年5月に納入します。
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6.扶養控除等申告書の提出
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源泉徴収税額は扶養親族等が何人いるかによって違ってきます。したがって給与計算をするためには扶養親族等の数を確認しておく必要があります。そのための資料となるのが「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
扶養控除等申告書は、従業員(給与の支払いを受ける人)が会社(給与の支払者)に提出します。
この申告書の宛先は税務署長殿となっていて、本来は会社を経由して所轄の税務署長に提出すべきものですが、実務上はその提出を省略して会社で保管しておけばよいことになっています。
この申告書は、毎年1月分の給与(中途採用者について採用後最初に支払う給与)を支払う前日までに提出してもらうことになっています。実務的には、ほとんどの会社がその前年12月の年末調整の時に他の資料と一緒に提出してもらっています。結婚や出産などによって、いったん申告した扶養親族等に異動があった場合には、異動後最初に給与の支払をする前日までに再度提出してもらうことになります。
なお、扶養親族のいない人も提出してもらう必要があります。この申告書の提出がないと、税額表は乙欄の適用となり、源泉所得税が高くなります。
また、扶養控除等申告書は、同時に二ヵ所以上のところへは提出できません。二つ以上の会社から給料をもらっている人は、給与の金額が最も多い会社に提出することになります。
この場合に申告書を提出した会社の給与を主たる給与といい、その他の給与を従たる給与といいます。
申告書の用紙は税務署に備えてあって、必要な人は誰でももらうことができます。
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7.源泉徴収票の用意
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給与を支払う際に、給与の支払者は源泉徴収することになっています。
そのときにいくら源泉徴収するかを表しているのが、「源泉徴収税額表」です。この表は毎年税務署から送られてきます。
源泉徴収税額表には、「月額表」、「日額表」、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」、「退職所得の源泉徴収税額の速算表」などがあります。
源泉徴収税額表の月額表をみると甲欄と乙欄があります。日額表には甲欄と乙欄のほか丙欄があります。月額表でも日額表でも、甲欄は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に適用します。
乙欄は、「給与所得者の扶養控除申告書」を提出していない人、および「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している人に適用します。
月額表、日額表ともに、甲欄の税額よりも乙欄の税額の方がずっと多くなっています。これは甲欄の税額がほかに給与がないことを前提にしたものであるに対し、乙欄の税額はほかに主たる給与があり、従たる給与について源泉徴収すべき金額を定めているからです。所得税の税率は累進税率になっているため、給与が多いほど源泉徴収すべき金額も大きくなるというわけです。
なお、甲欄は、扶養親族等の数(0人から7人)によって税額が八つに分類されていて、その数が多いほど税額は少なくなっています。
日額表にある丙欄は、日雇いされている人に給与を支払うときに使用されるものです。
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8.住民税について
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市区町村民税と都道府県税をあわせて住民税と呼んでいます。
住民税には、所得金額の多少にかかわらず一定の税額を納税する均等割と、所得金額を基礎にして税額が計算される所得割があり、その合計額を納付することになります。
会社は、毎年1月31日までに、従業員の住所地の市区町村に給与支払報告書を提出することになっています。この給与支払報告書は、源泉徴収票とまったく同じもので、会社が前年1年間に支払った給与等をもとに作成したものです。
市区町村は給与支払報告書をもとに、各従業員の住民税額を計算し、会社に通知します。所得税は当年の所得に対して当年の税額が計算されますが、住民税は所得税と違い前年の所得をもとにして当年の税額が計算されます。
なお、自営業者等の住民税は、税務署に提出した所得税の確定申告書をもとに市区町村が計算します。
市区町村が住民税を徴収する方法には、特別徴収と普通徴収の二つの方法があります。
特別徴収は、給与所得者に対する徴収方法で、会社などの給与の支払者(特別徴収義務者といいます)が給与を支払うときに住民税を天引し、それを従業員に代わって納付する方法です。
普通徴収は、自営業者など一般の納税者に対する徴収方法で、納税者本人に納税通知書を送付し、それにもとづいて本人が納付する方法です。
なお、住民税の課税と徴収については、市区町村が道府県民税の分もあわせて担当していますので、窓口は市区町村になります。
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9.給与計算は法律に基づいて
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給与計算は、就業規則や給与規定にもとづいて行なわれることを説明しましたが、それだけではなくいろいろな法律の規制を受けて行なわれます。
具体的には、労働基準法、健康保険法、介護保険法、厚生年金保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、所得税法、地方税法といった法律です。
このうち最も重要なのが労働基準法です。労働基準法は、賃金、労働時間、休暇などの労働条件の最低基準を定めている法律です。
就業規則は労働基準法の規定にしたがって作成されます。
時間外労働や休日労働したときの割増賃金の計算のしかたや賃金カットできる範囲、給与の支払いについての五原則とか、労働時間・休憩・休日・および年次有給休暇な給与計算に関係の深い内容が定められています。
その他の法律は、主に給与の支払額から控除する項目(社会保険料、所得税、住民税)について規定しているものです。
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